“神判不履行”剪枝サイア
プレイヤー:スケヴェーヌ
君のことが知りたいな。ね、教えて?
- 年齢
- 不明(外見10代半ば~後半)
- 性別
- 不明
- 星座
- 身長
- 149/1111
- 体重
- 15/111
- 血液型
- ワークス
- レネゲイドビーイングD
- カヴァー
- UGNイリーガル
- ブリード
- ピュアブリード
- シンドローム
- ウロボロス
- HP最大値
- 28
- 常備化ポイント
- 8
- 財産ポイント
- 0
- 行動値
- +6=14
- 戦闘移動
- 19
- 全力移動
- 38
経験点
- 消費
- +34
- 未使用
- 0
ライフパス
| 出自 | “それ”は、ある男の歪な願いによって創られ、しかしそれを果たさぬ事を決意した。存在理由に背を向けることが人の罪であり証ならば、それに倣おうと。 | |
|---|---|---|
| 最後の希望 | ||
| 経験 | “それ”は、憎悪の代弁者であり執行者であった。人によって産まれ、人に絶対を強いる事が出来るそれを、男は“神”と呼び崇めた。 | |
| 殺戮の日々 | ||
| 邂逅 | 男は、神に力を与えるべく、数多の贄を供した。神たる“それ”が一時の間、贄の一匹を生かし、飼ったのはほんの気まぐれだった。 | |
| 任意:少女 | ||
| 覚醒 | 侵蝕値 | 全て神とは人が望んだ為に生まれてくる。そして、その役割さえも。“それ”は、総ての生命への報復を請われ、生まれてきた。 |
| 生誕 | 17 | |
| 衝動 | 侵蝕値 | 全ての命を殺す。それが生まれた理由、存在意義。……時に、思う。用途を持ち生まれてくる神と機械。その違いは何処にある? |
| 殺戮 | 18 | |
| その他の修正 | 10 | ヒューマンズネイバー+原初の黒+原初の紫-ソーシャルサポート |
| 侵蝕率基本値 | 45 | |
能力値
| 肉体 | 2 | 感覚 | 2 | 精神 | 4 | 社会 | 1 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| シンドローム | 1×2 | シンドローム | 1×2 | シンドローム | 2×2 | シンドローム | 0×2 |
| ワークス | ワークス | ワークス | ワークス | 1 | |||
| 成長 | 成長 | 成長 | 成長 | ||||
| その他修正 | その他修正 | その他修正 | その他修正 | ||||
| 白兵 | 射撃 | RC | 1 | 交渉 | 1 | ||
| 回避 | 1 | 知覚 | 意志 | 1 | 調達 | 3 | |
| 知識:人間 | 1 | 情報:UGN | 1 |
ロイス
| 関係 | 名前 | 感情(Posi/Nega) | 属性 | 状態 | |||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Dロイス | 遺産継承者:白猿の額冠 | ― | このDロイスを取得した時、遺産継承者専用アイテムからひとつ選び、取得する。これはアイテムごとに別のDロイスとして扱う。取得したアイテムは常備化されているものとして扱い、自分以外に使用、装備不可であり、効果を受けることも出来ない。 | ||||
| 少女 | 執着 | / | 悔悟 | 君の名前など聞かなかったし、顔だってろくに見なかった。それでも、君を忘れないと宣う私の欺瞞を赦して欲しい。 | |||
| 神父 | 尽力 | / | 隔意 | 神を望んだ男よ。私は、誰の願いも叶えはしない。それを義理立てと宣う私の傲慢を赦して欲しい。 | |||
| 白銀明日香 | 庇護 | / | 不快感 | 白銀明日香ラスボス展開希望byPL | |||
| ― | |||||||
| ― | |||||||
| ― | |||||||
エフェクト
| 種別 | 名称 | LV | タイミング | 技能 | 難易度 | 対象 | 射程 | 侵蝕値 | 制限 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| リザレクト | 1 | オートアクション | ― | 自動成功 | 自身 | 至近 | 効果参照 | ― | |
| (LV)D点HP回復、侵蝕値上昇 | |||||||||
| ワーディング | 1 | オートアクション | ― | 自動成功 | シーン | 視界 | 0 | ― | |
| 非オーヴァードをエキストラ化 | |||||||||
| ヒューマンズネイバー | 1 | 常時 | ― | 自動成功 | 自身 | 至近 | RB | ||
| レネゲイドビーイングであることを表すエフェクト。衝動判定に+LvDする。このエフェクトは侵蝕率でレベルアップせず、このエフェクトを取得した場合基本侵蝕率を+5する。 | |||||||||
| オリジン:レジェンド | 1 | マイナーアクション | ― | 自動成功 | 自身 | 至近 | 2 | RB | |
| 噂話や都市伝説、集合意識などから形作られたレネゲイドビーイングであることを表すエフェクト。このシーンの間、精神を使用して判定するあらゆる達成値を+Lv×2する。 | |||||||||
| サイレンの魔女 | 1 | メジャーアクション | 〈RC〉 | 対決 | シーン(選択) | 視界 | 5 | Dロイス | |
| 「攻撃力:+[Lv×3]」の射撃攻撃を行う。このエフェクトを組み合わせた攻撃では装甲値を無視する。また、《コンセントレイト》を組み合わせることは出来ない。 | |||||||||
| 原初の赤:ダンシングシミター | 7 | メジャーアクション | 〈RC〉 | 対決 | ― | 視界 | 3+1 | ||
| 所持している白兵武器をLv個選択する。「攻撃力:+[選択した個数×3]」の射撃攻撃を行う。選択した武器は攻撃に使用したものとして扱う。 | |||||||||
| 原初の紫:神速舞踏 | 7 | オートアクション | ― | 自動成功 | 自身 | 至近 | 2+1-1 | ― | |
| 攻撃の判定を行った直後に使用する。その達成値に+[Lv×2]。この効果は両手持ちの武器には適用できない。1回の判定につき攻撃に使用した武器の数まで重複して使用出来る。 | |||||||||
| 永劫進化 | 1 | セットアッププロセス | ― | 自動成功 | 自身 | 至近 | 3 | 100% | |
| そのRの間、《原初の〇》で取得したエフェクト全てのLvを+1。この際、Lv上限を超えても良い。ただし回数制限は増加しない。シナリオ中1回まで。 | |||||||||
| 原初の黒:オーバードーズ | 1 | メジャーアクション | シンドローム | 4+2 | 100% | ||||
| このエフェクトを組み合わせた判定では、組み合わせたエフェクト全てのLvを+2する。この時、Lv上限を超えてもよい。ただし、エフェクトの使用回数は増加しない。このエフェクトはシナリオ中にLv回使用可能。 | |||||||||
| 傍らの影法師 | 1 | メジャーアクション | 効果参照 | 自身 | 至近 | ||||
| 自分の影を動物や人間の形に立体化させ付き従わせるエフェクト。影はエキストラとして扱い、外見は自由に設定出来るが会話は不可能。元の影に戻すにはオートアクションを使用する。影であることを隠蔽するためには、見破ろうとする者の<知覚>と自分の<RC>を対決させる。 | |||||||||
| 闇夜の烏 | 1 | メジャーアクション | 自動成功 | 自身 | 至近 | ||||
| 自らの姿を影の中に溶け込ませ、自由に移動するエフェクト。自分の姿は完全に溶け消えて発見されることはなくなるが、影の中から出たり光で照らされるなどして影が消えると効果は無くなる。戦闘中は使用出来ない。GMは<知覚>による判定を行わせても良い。 | |||||||||
コンボ
森羅罰刑・星に願いをこの地に愛を
- 組み合わせ
- 原初の赤:ダンシングシミター+サイレンの魔女+原初の黒:オーバーロード
- タイミング
- メジャーアクション
- 技能
- RC
- 難易度
- 対決
- 対象
- シーン(選択)
- 射程
- 視界
- 侵蝕値
- 15(37/39)
- 条件
- ダイス
- C値
- 達成値修正
- 攻撃力
- ダイス
- 100%以上
- 4
- 10
- 1+4
- 39
- 160以上
- 4
- 10
- 1+6
- 45
- 4
シナリオ中1回
《永劫進化》《オリジン・レジェンド》前提。《原初の紫:神速舞踏》適用。神速舞踏重複回数最大11~12(達成値+198/240)。装甲無視。
以善罪悪・哀は愛より出でて愛より愛し
- 組み合わせ
- 原初の赤:ダンシングシミター+原初の黒:オーバーロード
- タイミング
- メジャーアクション
- 技能
- RC
- 難易度
- 対決
- 対象
- 単体
- 射程
- 視界
- 侵蝕値
- 10(32/34)
- 条件
- ダイス
- C値
- 達成値修正
- 攻撃力
- ダイス
- 100%以上
- 4
- 10
- 1+4
- 33
- 160以上
- 4
- 10
- 1+6
- 36
- 4
シナリオ中1回
《永劫進化》《オリジン・レジェンド》前提。《原初の紫:神速舞踏》適用。神速舞踏重複回数最大11~12(達成値+198/240)。装甲無視。
衆生裁断・生は寄なり死もまた寄なり
- 組み合わせ
- 原初の赤:ダンシングシミター+サイレンの魔女
- タイミング
- メジャーアクション
- 技能
- RC
- 難易度
- 対決
- 対象
- シーン(選択)
- 射程
- 視界
- 侵蝕値
- 9(23/25/27)
- 条件
- ダイス
- C値
- 達成値修正
- 攻撃力
- ダイス
- 100%未満
- 4
- 10
- 1+2
- 24
- 100%以上
- 4
- 10
- 1+4
- 30
- 160%以上
- 4
- 10
- 1+6
- 36
- 4
《オリジン・レジェンド》前提。《原初の紫:神速舞踏》適用。神速舞踏重複回数最大7~9(達成値+98/128/168)。装甲無視。
異端神罰・______主は人につれ
- 組み合わせ
- 原初の赤:ダンシングシミター
- タイミング
- メジャーアクション
- 技能
- RC
- 難易度
- 対決
- 対象
- 単体
- 射程
- 視界
- 侵蝕値
- 4(18/20/22)
- 条件
- ダイス
- C値
- 達成値修正
- 攻撃力
- ダイス
- 100%未満
- 4
- 10
- 1+2
- 21
- 100%以上
- 4
- 10
- 1+4
- 24
- 160%以上
- 4
- 10
- 1+6
- 27
- 4
《オリジン・レジェンド》前提。《原初の紫:神速舞踏》適用。神速舞踏重複回数最大7~9(達成値+98/128/168)。
| 武器 | 常備化 | 経験点 | 種別 | 技能 | 命中 | 攻撃力 | ガード 値 | 射程 | 解説 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| スタニングバトン(8) | 8 | 白兵 | 〈白兵〉 | 0 | 3 | 2 | 至近 |
| 防具 | 常備化 | 経験点 | 種別 | 行動 | ドッジ | 装甲値 | 解説 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 神縛りの荊冠 | 防具 | 3 | 5 | ※白猿の額冠の相当品 ハヌマーンのエフェクトひとつを選択し、Lv1で取得する。これには経験点は必要なく、経験点を消費して成長できる。 代償:バッドステータスの暴走を受ける度、5D点のHPを失う。 |
| 一般アイテム | 常備化 | 経験点 | 種別 | 技能 | 解説 |
|---|---|---|---|---|---|
| Rバランサー:原初の紫:神速舞踏 | 10 | エンブレム/一般 | 自身が取得しているエフェクトひとつを選択。そのエフェクトの侵蝕値を-1。(最低1) | ||
| デモンズシード:原初の赤:ダンシングシミター | 3 | 一般 | 取得しているエフェクトひとつの最大レベルと侵食値を+1。「タイミング:常時」のものは代わりに侵食率基本値を+2する。このアイテムはひとつしか常備化出来ない。 | ||
| ドロップアウト:失敗作 | 5 | エンブレム/一般 | UGN以外の組織のエンブレムアイテムからひとつを選択し、取得可能になる。経験点は別途必要。GMの許可が必要なアイテムは許可を得ること。 | ||
| 失敗作:原初の赤:ダンシングシミター | 5 | エンブレム/一般 | 取得時に自分の取得しているエフェクトをひとつ選択する。そのエフェクトの最大Lvを+1。 | ||
| デリバリー | 5 | エンブレム/一般 | 行動値+3。 | ||
| ソーシャルサポート | 5 | エンブレム/一般 | 侵蝕率基本値-2。 |
経験点計算
| 能力値 | 技能 | エフェクト | アイテム | メモリー | 使用総計 | 未使用| 0
| 7
| 124
| 33
| 0
| 164
| 0/164
| |
|---|
侵蝕率効果表
現在侵蝕率:
容姿・経歴・その他メモ
プロフィール
白皙と薄紅の瞳を持つ美しい少女の姿をした、放浪のレネゲイドビーイング。現在はあるミッション系女学院に籍を置いており、寮で寝泊まりしている。
イリーガルとしてUGNに協力する立場でこそあるが、その出生と正体には謎が多く、UGN内でも把握している人間はごくわずかである。
「私は誰の願いも叶えない」
と謳う彼女だが、それは非協力を示す言葉ではなく、人の目的意識と自立を尊ぶ意識から、飽くまで協力者という立ち位置を主張するための論であり、人間に対しては極めて友好的。
他者へは積極的な接触を行うものの、迂遠な言い回しと妖しげな態度、人形のような美貌から警戒を買うことは少なくない。
戴く黒い茨の冠は彼女のレネゲイドと密接に結びついており、外れない。それは、人が神を縛ろうとした痕跡のようにも映る。
過去(ヨマンデイイ)
①ある男の狂信
ある男が居た。気が触れたと言って差支えない男。人生において積み重ねた財産、地位、そして愛した全てを瓦落と喪い、空いた器に、ありたけの憎悪を注ぎ入れた、そのような喪失者であった。
そんな男に、幸運と不幸がそれぞれひとつ。絶望し、自死を図った折にオーヴァードに目覚めたこと。そして、男を見つけ出したのは、UGNではなくFHであったこと。
覚醒した異能と、久方ぶりに得られた承認。一時は全能感に酔いしれ、己の不幸を暴力に転換し他人に振り撒いた男であったが、程なくしてUGNの迎撃を受け、敗走する。
這う這うの体で逃げ帰った男に対するFHの対応は、冷徹を極めた。役立たずの駒に用はないと、男は再び、居場所を失った。
超常の力を得て尚、何も成すことが出来なかった男は、尽きせぬ怨念だけを抱いて当て所なく彷徨い続けた。
やがて男が辿り着いたのは小さな教会だった。
誰も居ない、古ぼけた廃教会。そこで拾い上げたのは聖書の一冊。湿気に晒され、また日に焼かれたことで乾いて変色した本が、埃を被って捨て置かれていた。そんな誰からも必要とされなくなった書物と自分を重ね、奇妙な感傷を抱いた男は、気付くとごわついた紙を一枚一枚捲り始めていた。
書に記されている中で男の目を惹いたものは、神の存在、そして数多の人間の罪の証。
人は最後の審判を受け、裁かれなければならない。とうに日が落ち、月明かりが差し込む教会で、男の歪みは導きを得た。
レネゲイドビーイング。かの存在について、FHに身を置いていた頃に教えられたことがある。レネゲイドが意志を持ち、依代を基に、肉体を得た者たち。彼らが依代に選ぶものは、何も形あるものだけではない。噂や伝承、人の思いさえ血肉とするのだ。愚昧極まる人間の願いをさえ。
……ならば、自分の願いはどうか。未だ訪れぬ最後の審判。起こらないのなら、起こせばいい。全ての生命に然るべき裁きを下す、神をこの世に降ろせばいい。レネゲイドよ、裁きの主たれ。
②名も無き少女の殉教
死ぬ。私は今日ここで。
そう確信し、しかし不思議と恐怖は無かった。絶対に避けられない死を前に、私の心と体は抵抗ではなく、受容を選択したのだ。
なんでもない一日のはずだった。突然、黒ずくめの神父服の男の人が話しかけてきて、それきり。
目を覚ますと岩肌に囲まれた広い洞窟の中、私の目の前に居たのはあの男と、怪物。
黒い茨の冠を戴いた、ビルのように大きな怪物。白い翼を広げて、まるで神さまみたいだなんて、呑気なことを考えてしまった。だって、本能的に分かる。あの怪物は、簡単に私を殺せてしまうだろう。私が何かを話すより早く、私をバラバラに引き裂いてしまう力があるって、直感的に分かったから。私が何をしても無駄だって悟ってしまった。
フリーズしている私を置いて、神父服の人が大きな声で怪物に話しかけてる。
ぼんやりと聞いていて理解した。やっぱりこの怪物は神さまなんだ。そして私は生贄。いつかこの神さまが、世界を滅ぼせるくらい大きく育つために与えられたご飯のひとつなんだ。
死にたくない理由なんていくらでも思いつくのに、それでも神さまの前ではそんなこと全部意味無いんだって、わがままでしかないんだって、理解させられる。そのくらい恐ろしい存在だった。
男はひとしきり喋った後、私の方を見向きもせずに立ち去った。何も無いはずの岩壁に触れると、まるでジッパーが開くみたいに道が現れて、向こう側へ消えてしまった。壁はすぐに閉じて、私と神さまだけの空間になった。
もうおしまいだ。せめて痛くしないで欲しい。神さまなんだから、そのくらいの願いは聞いてくれると良いな、なんて。神さまには顔が無くて、真っ暗な闇が私をじっと見下ろしていた。
……見下ろしている、だけ。私に何をするでも、話しかけるでもなく、ただ私をじっと見下ろして……ぷい、と顔を逸らしてしまった。
その瞬間、私はようやく、緊張で呼吸を忘れていたことを思い出して必死に息を吸い込んだ。見逃された?それともお腹が空いてないだけ?もしかしたら、私は不味そうで食べたくなかったのかな?どれだけ考えても神さまは応えてくれないし、見向きもしてくれない。羽ばたきもしていないのに、広い洞窟の中でふよふよと浮いている。時折、身体を動かしているので起きてはいるみたいだけれど。
恐る恐る、震える脚に鞭打つようによたよた立ち上がる。私が動き出しても、やっぱり神さまは無反応。でも、いつ気が変わるか分からない。私は出口を求めて、洞窟の中を探し始めた。
結局、出口はどこにもなかった。あの男が出ていった壁を調べても硬い岩の壁でしかなかった。天井は閉じているし、灯りはあの男が用意したのかランタンが点々と設置されているだけ。この空間がどうやって成り立っているのかさえ分からない。相変わらず神さまはこの洞窟で浮いているばかりで、何をしてくれる訳でもない。頭がどうにかなりそうだった。
それから、何時間が経ったのだろう、幸い、大きな水溜まりが出来ていて、気は進まないけれどそれを飲めば渇きは凌げた。けれど、いつか限界が来る。やっぱり、ここの出入りはあの神父しか出来ないんだろう。また彼がやってきたら、出してくれるように頼むしかない。聞いて貰える保証なんてないけど、それでもやるしかない。……そう意気込んでいたせいで、背後の神さまが私に腕を伸ばしてきているのに気付かなかった。
突然の浮遊感。そして、視界が真っ暗になる。自分が神さまに握り締められたのだと気付くのに時間はかからなかった。パニックを起こして叫ぼうとするけど、全身を締め上げられて上手く声が出せない。殺される。やっぱり食べられるんだ。さっきはあんなに大人しく出来ていたのに、今では自分でもびっくりするほど死ぬのが怖い。けど、私がどれだけもがいたところで神さまの掌から抜け出す事は出来なかったし、それに神さまは私を殺そうとはしなかった。
冷静さを取り戻して、どうしていきなりこんなことをしてくるのかと疑問を投げかけようとした瞬間、足音と共にあの男の高らかな声が聴こえてきた。
同時に神さまの圧迫が更に強くなる。息苦しさの中で声もあげられず、私は男の言葉を盗み聞くことしか出来なかった。
男は私の存在に気付かないまま、神さまに向けて滔々と語り出す。内容はまるで理解出来なかったけれど、それが正気の沙汰でないことだけはハッキリと分かった。如何に人間が愚かなのか、そしてそれを滅ぼすことが神の使命なのだと、興奮した様子で語り続けている。
一体、何の資格があって全ての人は裁かれるべきなんて語っているのかと憤りを覚える。同時にひとつ、疑問が生まれた。男の語り口はまるで先生が授業をしているような、神父が信者達に説教をしているようにも思えたのだ。
神父が神に教えを説くなんて、明らかにおかしい。宗教に詳しくない私でもわかることだ。神さまと神父。そう見えた構図は正しくなくて、本当は神父気取りの男が、この怪物を神と呼んで利用しているだけなんじゃないのか?そんな考えが脳裏に過ぎる。
この生き物も、ただ閉じ込められているだけで、人に危害を与えたい訳ではないのかも。それに、人の言葉を理解しているなら、話が通じるのかもしれない。もしも、この生き物と一緒に、神父をやっつけて外に出られたなら……。薄暗い洞窟の中に、小さな、けれど確かな灯りが見えた気がした。
③そして少女は神を殺す
“私”は神、或いは主と言うらしい。目を覚ました時、一番最初に教えられたのがその名だった。
私の前には、感極まった様子で捲し立てる、痩躯な神父服の男。それが人間という生き物であることは本能的に理解していた。彼は興奮しきった様子で私と、世界と、人間との関係を、手に持ったぼろ切れのような書物を元に語り始めた。
曰く、人は罪を犯し過ぎた。曰く、世界は人で溢れすぎた。曰く、だから私は人に然るべき裁きを下さねばならない。最後の審判の日に備え、力を蓄えるためにこの岩肌に囲まれた何も無い空間に居るのだと。
どうやら私は、恨みも無ければ顔さえ知らない八十億の命を消し去るために産まれてきたようだ。それにどのような意味があるのかは甚だ疑問であったが、私の存在意義がそうだと言うのなら、聞いてやるのも吝かではないか。それに、私が生まれてきたのは恐らくこの男のお陰なのだから、生んでもらった恩くらいは返してやるべきだろう。
そうして、なんの恨みもない復讐劇が、人知れず幕を開けたのだった。
男は日に一度(この場所では時間など分からないので、男がやって来るのを一日と定義している)、私に教えを説きにやってくる。人の愚かさを語り、裁きを下すことの正当性を訴えかける。それらは全て、男の持つ傷んだ本を元に語られるものだが、どうにも曲解が激しい気がするのは気の所為だろうか。何にせよ、私はこの男のようには人間を恨めなかった。何しろ、人間という存在を目の前の彼以外に知らない。まったくもって知らなすぎるからだ。とはいえ、私の唯一の縁である彼がこうも切実に望むのだから、殺戮は全うしてやろうと思っているが……。
金切り声が響く。その声に私との会話(常に一方的に捲し立てられているだけだが)を遮られた神父は苛立ち、連れてきた青年を足蹴にする。
ぼんやりと岩の天井を眺めていた私は、その声に意識を取り戻す。食事の時間か。
定期的に神父は何処からか人間を攫ってきては、私に食べさせるのだ。人の血肉とレネゲイドウィルスを吸収させ、力をつけさせる狙いがあるらしい。事実、もう数え切れないほどの人間を捕食してきた私の体は、生まれた時より遥かに大きく、この広い洞窟も随分狭く感じられるようになっていた。
最初は泣いて命を乞う人間の姿に、食欲が湧かなかったものだが、神父が私に取り付けている黒い茨の冠。彼の意に従わない時、これが体を蝕むのだ。破壊的な高周波振動が私のレネゲイドを破砕し、激しい苦痛を与えられる。私が唯一恐怖するものと言っていいだろう。
今では、人を喰らうことに何の感慨も無かった。どうせ最終的には皆殺しにするのだから躊躇うことでもなかったのだ。
鳩尾に蹴り込まれ蹲っている青年に触手を伸ばし、絡め取る。涙や鼻水や唾液で顔をぐちゃぐちゃに汚しながら、手足をばたばたと振り回し抵抗する青年を、無造作に取り込んだ。……なんのことはない、私の日常だ。男は満足気に頷くと、洞窟を後にした。
ぼうっと地面を眺めていると、ふと気付く。先程喰らった青年の持ち物だったのだろうか、薄っぺらで小さな板が落ちている。慎重に拾い上げてあれこれ触っていると、板が淡い光を放って、その表面に画像を映し出す。そこには、今しがた食い殺した男と、もう二人。大人の女と、小さい娘。家族の写真だった。
なんの悪意も見い出せない、純粋な笑顔。死に際に見せた表情とはまるで正反対のそれに、微かな痛みを覚える。茨は起動していないはずだが。
この奇妙な痛みの正体も分からぬまま、神父にこの板を見ていたことを知られても面倒だと、粉々に握り潰した。
そして再び揺蕩に戻ろうと体を宙に浮かべる。……だがやはり、あの写真が、初めて見た人間の表情が頭から離れない。
……試しに今度、食わずにおいてみようか。
生まれて初めて、私は人間に興味を抱いた。
その日やってきた人間は、妙に静かだった。年若い娘。状況を理解しているのか居ないのか、一言も発さずただ呆然と私を見上げていた。
神父は連れてきた生贄が完全にフリーズして、話を遮られないことに上機嫌なようで、私が娘を喰うのを確認せぬまま退出していった。これ幸いと、私は人間の観察を続ける。…………ピクリともしない。まさか、死んでいるのか?どうしたものかと視線を外した瞬間、視界の外でうめくのが聴こえた。なんだ、生きていたのか。大方、神父の話で私に喰い殺されると恐怖で硬直していたのだろう。実際、普段であればそうしていたわけで。とすれば、あまりじっくりと眺めていると、意識されてしまい観察に障るかもしれない。興味の無いフリをして、娘の動向を覗うことにしよう。
娘は、私を警戒しながらこの空間の調査を開始した。出口を探しているのだろう。それもそうだ、この娘は外から連れてこられ、帰る場所がある。この場所に居続けることには耐えられまい。……思えば、私は一度も外に出ようと思ったりはしなかったな。
しばらく探索を続けていたようだが、出口が見つからないことが分かると娘は項垂れ、ああだこうだと独り言を呟いていた。喉の渇きに耐えかね、水溜まりの水を飲もうとしている時など、特に喧しく葛藤しているようだった。人間は、伝える相手が居なくとも話すものなのか?……思えば、私は一度も言葉を発そうとはしなかったな。
これが人間というものか。この短い時間の中、しかし私がやろうとしなかったことを幾つも見せてくれる。
もう少し観察を続けようと思った折、そろそろ、神父の説教が始まる頃合いであることを思い出す。この騒がしい娘を見つかるわけにはいかない。私は彼女に触手を伸ばした。
連れてこられた時は静かだった癖に、突然大慌てで暴れ出した娘に驚き、思わず落としそうになる。これ以上騒がれると困るので、その小さい体を締め上げる。殺さず、しかし自由を許さない程度の加減で人間を持つのは初めてのことだったので誤って潰さないかと不安はあったが、問題は無さそうだ。
そうこうしている内、神父がやってくる。いつも通りの、曲解甚だしい説教が繰り広げられていく。
やはり、この男の語る人間の像と、私が見た人間の姿は、別のものであるように思えてならない。私が人間の全てを理解しているとはとても言えないが、あの笑顔が、裁かれる悪であったとは思えない。
……むしろ悪とは、あの家族を引き裂いた私なのではないか?あの青年に限らない。私は今まで、なんの感慨もなく人を喰い殺し、なんの情動もなく皆殺しにしようと考えていた。神父の望むままに。これが神のあるべき姿なのか?青年の持っていたあの板が思い起こされた。あれは人間の持つ道具のひとつだろう。人の意のままに操られる機械。私とあの板に、どれ程の差異があるのだろう。
ずきり。まただ。また、あの痛み。茨のもたらすものではない、私の内に生じる奇妙な苦痛。思考に耽っていた私は、はっとする。娘を握る触手に、無意識に力を込めすぎていた。もぞもぞと動く感触はするので生きてはいるだろう。しかし怪我をさせてはいないだろうか。最早、神父の語りは私の耳に届いていなかった。
私の心中も知らず語り終えた神父は満足気に退出していく。その後娘を解放してやると、彼女は噎せながらも自分の足で立ち上がった。見たところ、怪我はさせずに済んだようだ。
娘は私を見上げる。恨み言でも言われるだろうかと考えていた私に、予想もしなかった言葉が投げ掛けられた。
「一緒にここを出よう」
娘は、私と神父との関係を、憶測ながらに、しかし的確に捉えた言葉で説明してみせた。
私はあの男に利用されているだけなのだと。
本当の人間とは、あの男が語るほど醜い存在ではないし、この世界に裁かれるべき罪などないのだと。
そしてどうか、自分の言葉を信じて、手を取って欲しいと。共にあの神父を倒し、二人で外に出よう、と。
全く奇妙な話だ。この人間を生かしたことで、私の時計の針が急激に回転を速めている。ほんの気まぐれが、停滞していた私の世界の歯車を動かすための、重要な部品だったとでも言うのか。
否、元々私の世界とは、あの男の描いた虚像に過ぎなかったのだろう。それに気付かず、与えられるまま命を奪い続け、あまつさえこの世界を滅ぼすなどと、私は。
悔やむ私に、手が差し伸べられる。私は、その手に、自分の手を───────。
刹那、フラッシュバックしたのは命を乞う人間たちの顔。私が無為に喰らってきた命の数々。そして、永遠に返せぬあの笑顔。あの奇妙な痛みは激しさを増し、私の身体を傷つけぬままに蝕んでいく。
済まない、ああ、済まない、娘よ。駄目だ。駄目なのだ。私にその手は取れない。その暖かさに触れることは赦されない。この閉じた岩戸の向こう、光の当たる場所へは、決して立ち入ること儘ならないのだ。
私の触手が怯えるように飛び退くのを見て、娘はひどく悲しげに手を下ろし、そして、私はもう、彼女の眼を真っ直ぐに見据えることはなかった。
それから、数日。娘はみるみるうちに弱っていった。当然だろう。ここにはかろうじて命を繋げるだけの飲み水しかなく、声に応える者も誰も居ない。出来事といえば私の触手に包み隠され、神父の説教を聴かされることのみ。脱出すると意気込んでいたその気力も失せてしまったのだろうか、地に伏せて過ごす事が増えた。そして時折、家族や友の名を呼んで独り、泣いていた。
私はこの娘を生かすべきではなかったのだろうか。このように苦しませるだけならばいっそ、出会ったあの日に喰ってしまっていれば良かったのだろうか。
私を苛む見えない苦痛は、日に日に痛みを増していき、更には娘の姿を視界に入れる度により強まる。今の私は、彼女を喰らうことが出来ずにいた。きっとこの娘の血肉は恐ろしい毒に違いない。見ているだけでこれほど苦しいのだから、口にした暁には、私は私を保てなくなるだろう。だから私は、今日も娘から目を逸らすのだ。
……しまった。私としたことが、全く油断していた。これで神とは、とんだ笑いものだ。怒り心頭の神父に呼応するように、茨から発せられるエネルギーが私の体を破砕し、また挫滅させていく。既に肉体は、半分以下にまで朽ちて縮んでいる。
娘を生かしていたことが気付かれてしまった。
きっかけは大したことでは無い。たまたま神父が訪れる時間を見誤った。弱々しい娘に触れるのを躊躇い、少しだけ、安静に寝かせておくことを選んでしまった。
早くそれを喰え。神父が叫ぶ。同時に、娘を殺そうと異能で作り出した杭を射出してくる。崩壊していく体に鞭を打ち、神父と娘の間に立ち塞がり、それを全身で受け止める。何故、名も知らぬ人間一人の為にここまでしているのか、私は私自身が分からなかった。
娘が何事かを叫んでいるのが聴こえたが、もう、この体は限界だった。遂に私を見限ったのだろう、神父は一際大きな杭を作り出すと、娘ではなく、私を狙いそれを放った。
死ぬのだな。私は今日ここで。
そう確信し、しかし恐怖は無かった。絶対に避けられない死を前に、それが今まで、自分が数多の罪無き人々に振り下ろしてきた謂れなき裁きであることを理解した。同時に、今まで私の内側を蝕んでいたこの見えない痛みの正体をも理解した。
これは罪悪感と呼ぶのだろう。無知蒙昧に命を奪い続けてきた愚かな自分を見つめ直し、その醜悪さに心が灼かれていたのだ。
やはり、人々に罪など無い。あるとしたら、それは何も考えず彼らを殺め続けてきた、意志薄弱な私にこそだ。
生まれてきた理由が間違っていたのだと理解した時、奇妙にも体が軽くなった心地がした。私の心と体は、完全に死を受け入れていた。
ああ、だが、せめてこの娘だけは生かしてやってくれないだろうか。ぼんやりと、そんな思いが過ぎった。
……信じ難い光景が、広がっている。弱々しく怯えていたはずの娘が、何故、私の前に立っている。何故、私を庇っている。何故。
身の丈ほどの杭を腹に撃ち込まれた娘は糸が切れた人形のように崩れ落ちる。何故、こんなことを───────!
体が崩壊する痛みさえ忘れ、娘に覆い被さるように神父から隠す。呆気にとられ、彼は硬直しているようだった。
止めどなく血を吐き出しながら、微かな声で娘は囁く。もう聴き逃しはしない。もう君から逃げたりしない。だから、聞かせて欲しい。
遅過ぎる。今更になってこんな感情が芽生えるなんて。自責の念で全身を切り刻みたくなる。その感情を抑えながら、耳を澄ませた。
「やっぱり、あなたは、神さまじゃない」
「悪い、化け物でも、ない」
「だって、私を、守ってくれてた」
「あなたは、ずっと、どうしたらいいかわからなかったんだよね」
「だったら、お願いします」
「神さまになんて、ならないで」
「なりたくない自分になんて、ならないで」
「誰かの願い、じゃなくて、あなただけの願いを」
「生きて」
娘は、事切れた。毎夜、同胞と故郷を想い泣いていた娘が、その今際の際に、泣き言ひとつ言わず、私なぞのために祈ったのだ。
神であらぬことを、祈られた。
思えば、この娘は、いつだって私に救いを乞うことはなかった。仲間として共に脱出する道を探していた。自分の足で、願いを叶えようとしていた。
それに比べ、私のなんと弱いことか。愚かなことか。鈍間なことか。この命と引き換えにする価値など、私にあるはずがないというのに!
神父の怒号が反響した。再び杭を浮かべ、こちらを狙っている。
……この男のことも、私は何も知らないな。必殺の一撃が迫る中、ふとそんなことを思い出した。この男の願いによって私は生まれ、いつかそれを叶えるために生きてきた。私の生涯で最も長い付き合いであったこの人物のことを、私は何一つ知らないのだ。
気が触れたと言って差支えない彼の狂気、怨念の源泉はどこにあるのだろう。一体どのような悲劇が、一人の人間をここまで狂わせたのか。知るはずがない。訊かなかったのだから。救いを求める者の心に、ただの一度も寄り添わなかったのだから。そんな私に、君を恨む権利など無いだろう。
ただそれでも、君の願いが間違っていることだけは、ようやく理解出来た。こんな愚か者を赦してくれとは言わない。…………ただ、済まない。
眼前に迫った杭が砕け散る。更には、四方を囲む岩の全てが崩れ落ち、破片は砂粒へと破砕されていく。なるほど、私以外に撃つとこうなるのか。
散々喰らい続けた茨の戒め。人間を取り込み血肉としたように、この力もまた取り込めるのではないかと試してみたが、狙い通り。上手く模倣出来たようだ。しかし人に撃つには強すぎる。神父には当てぬよう気を遣って正解だった。彼は、腰を抜かしてあんぐりと口を開けるばかりだった。
差し込む光に目が熱くなる。あれが太陽というものか。人間は、この下で生きているのだな。……本来、私にこの光を浴びる資格は無いのだろうが、それでも娘の亡骸を抱き、飛び立つ。彼女を弔える場所を探さなくてはならない。去り際、瞬く間に小さくなった神父の影を見下ろす。
君の願いを、私は叶えない。やはり私は、神ではないのだと悟った。
望まれたように生きられないこと、君の孤独に寄り添えなかったこと、君の狂奔を終わらせてやれないこと。それら全てを申し訳なく思う。神ではない以上、君を裁く資格は私に無いし、私には、君が言うほど世界は罪に満ちていないのではないかと思える。加えて、生きろと願われてしまった。私自身の願いを見つけろと祈りを受けた。
私は、君たち人間をもっと知りたい。君たちの傍に居たい。これから先の命を、君たちと共に在りたいのだ。……これは、君の願いを放棄して自分の都合を優先しているに過ぎない。それも、本当に済まないと思う。
故に、君に誓おう。私はこの先、誰の願いも叶えることはないと。創造主の命令を聞かなかった私が、今更他者の願いを叶える資格は無い。神であろうとすることは、もう二度と無い。ただ、傍に居るだけ。腹を空かせて飢える者が居たら、釣竿を渡してやりたい。本を求めて手を伸ばす者が居たら、脚立を用意してやりたい。寒さに凍えるものが居れば、陽のあたる道を示してやりたい。ただそれだけでいい。それ以上は、何も求めない。
既に遠く見えなくなってしまった彼を想い、心中で独り言ちた。
こんなものは義理立てにもならない屁理屈だ。それでも、私のなりたい自分とは、そんな罪深い者なのだ。自己中心的で、独善的。挙句、自分の罪を償おうともしない。まるで、君が語った人間のようだろう。
そんな自嘲を思い浮かべた瞬間、体に異変が起こる。翼が揚力を失いゆっくりと下降していく。崩れかけていた肉体がさらに縮んでいく。娘を取り落とすまいと必死に手繰り寄せるも、触手の殆どが萎縮していき、残ったものは僅かに二本だけだ。
着陸する頃には私の体は娘と変わらない程にまで縮小していた。地面に降り立った時、私には二本の脚が生えていた。代わりにか、翼は溶け落ちてもう飛ぶことが出来ない。
私は、人間になっていた。
腕に娘の亡骸を抱いたまま、呆然と立ち尽くす。そして、ゆっくりと理解した。これで、正真正銘、神は死んだのだな。
④剪枝サイアの生誕
その街では、奇妙な失踪事件が相次いでいた。年齢も性別も時間帯もバラバラに、月に一度、一人が行方不明になる怪事件。UGNはオーヴァードの関与を疑い、捜査を続けていたものの、その事件は思いもよらない幕切れを迎える。
失踪事件と入れ替わるように起こったものが、奇妙な都市伝説。遺体を抱えた少女の霊が、その遺体の家を尋ねて話しかけてくるという噂。
連日の張り込みを続け、少女の霊の正体がレネゲイドビーイングであることが発覚。UGNはそのRBを確保、収容。抱えていた少女の遺体との関連が調べ上げられた。
そして、そのRBが失踪事件の関係者であることが明らかになった。その個体は元FHの構成員の手により生み出され、攫われた人々を捕食し続けていた事実も発覚し、UGNでは個体を駆除すべきだと言う声が挙げられたものの、尋問の続行の名目にて保留が決定された。
やがて、その個体が監禁され、社会道徳とかけ離れた教育を受けさせられていた事実、またそれを補って余りある人類への友好性が示されたことでそのRBは保護の名目で監視下に置かれる運びとなった。
剪枝サイアと命名されたそのRBはUGNより提供された教育カリキュラムを経た後、自由に行動することを強く希望する。強要された行動だったとはいえ人間を捕食していた個体に自由を与えることへの反発は当然強く、数年のエージェント活動が義務付けられた。そして、その間に収めた優秀な功績によって、無事にイリーガルへの転向が為された。
元FH構成員の“神父”については未だ足取りを掴めていない状況にあり、剪枝サイアがイリーガル転向の際の条件として、“神父”案件の捜査の続行が求められた。
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