「彼が、ここでしっかりと働けば何も言われなくなると言っておりました。」
トレア・シュバルツ
彼女は、ある辺境の村で産まれた。そこでは名をつけられることもなく暴言で呼ばれ迫害されていた。ただ彼女にも生きる理由があった。それは村の外れにいるおばあちゃんが彼女に優しく接してくれていたからだ。おばあちゃんからマナを吸わせてもらい。暖かい食事も出してもらった。おばあちゃんはいつも「可愛いんだから早くお嫁に行って幸せに暮らしなさい。」と言っていた。そして十数年がたち、彼女が成人の日。おばあちゃんが死んだ。心臓発作だった。だが、村の人々はトレアを犯人だとして「毒をもった」「魂を吸い取ったんだ」などと根拠のない噂をひろめ。トレアを誰一人として救おうとしなかった。マナも吸えず衰弱死が直前に迫っていたころ。ある1人の人間の学者が村にやってきた。「ここにアルヴがいると聞いて」との事。彼は様々な種族について研究する者で珍しいアルヴがいると聞いてやってきたらしい。彼はトレアにマナを吸わせこう言ってきた。「私の研究に御協力お願いしたい。もし、御協力してくださったら私にできることであればなんでも致しましょう。」と。トレアはおばあちゃんがいつも言っていたことを思い出し彼に「じゃあ、結婚しましょ?」と冗談として言った。つもりだった。彼は驚いた顔をした後すぐに「そんなこと言ってくる人は初めてだ。いいだろう正式に結婚することにしよう。」と。かくしてトレアはヒラギ・シュバルツと結婚することになった。(トレアと言っているがトレアという名前はこの時ヒラギからつけてもらったものだ)
結婚し、一緒に行動していく中で彼がどんなに人物なのかわかった。彼は学者でありながら熱心なキルヒア信者であった。また、自衛用に身体を鍛えていたが全くもって成長しなかった。ああ、素人目で見ても。分かる、分かってしまう。こいつには剣と魔法の才能がまったくもってない。だが代わりに学者としての才能はずば抜けていた。実験をし、その違いなどを事細かに書き出しそれを論文にする。この観点だけだったら誰にも負けないと思うほど才能があった。また、彼は料理が下手だった。なのでトレアが毎日の食事を作っていた。彼はどんな料理を出しても美味しいとしっかりと言ってくれて、本当に美味しそうに食べるのでトレアは料理を作るのが趣味になっていた。また、彼は似ていた。マナ吸いの時に全く嫌な顔をせずに(なんなら喜んで)吸わせてくれるし。暇な時はちょっとした雑学を教えてくれる。それはまるでおばあちゃんのような面影があった。
それから八十年程度たった。ヒラギは人族に属するほぼ全ての種族の論文を出した。だが、ヒラギも人間だ結婚してからというものほとんど休まず八十年も研究に没頭していた。いくら研究が楽しくともそれは身体が追いつかない。それはヒラギも承知だったのだろう。死亡する前に彼はトレアに鍵と1冊の本をあげた。「この鍵は僕が死んだ後に棚を開けるための鍵だその棚の中にあるものを僕が死んだ後に見て欲しい。それとその本は僕が君を実験体にした時の本だ、しかもその本は最初に僕が直筆したやつでねこの世にひとつしかないから大切にしてくれよ。」と。そういった翌日彼は死んだ。
トレアは何も出来なくなっていた。彼女に優しく接してくれていた最愛の人が死んだのだ。到底数日は死体から離れることは出来なかった。
あぁ、腐敗臭が漂う。こんなことをしていても何も進まない。彼女は彼の死体を焼き。埋めた。そうしているうちに彼の遺言を思い出した。トレアは棚を開け、中には1冊の本と紙がはられている不思議な物体があった。本は日記のようだ。日記には80年前のトレアとヒラギがであった時のことが書いてあった。
「僕は今日初めてアルヴを見た。すごく可愛いアルヴだ。だが誰も助けようとせずただ衰弱死を待つような顔をしていた。僕は彼女にマナ吸いをしてもらった。少し心地良かった。おそらく魔法も練体士としての才能がなかった僕が初めてマナを失ったからだろう。話を戻して、彼女は優しかった。実験に快く協力してくれた。だが結婚してくれというのは少し驚いた。だがアルヴは理解があるパートナーと暮らすというのはよくある話だ。幸い僕も独身だったしこんなにも可愛い子が結婚を迫ってくるなら断る人は居ないだろう。彼女には名前がなかった。だから僕がトレアという名前を提案したら喜んでその名前を使ってくれた。その時の彼女が可愛くて名前の理由を伝えるのを忘れていたが理由はカトレアの花からとってトレアだ花言葉は魅惑的。このことはまた暇な時にでも言っておこう。」
日記には他にも書かれており最後のページには最近書いたのか少しヨボヨボの字ではっきりと「冒険者となれ。そうすれば君を穢れなどで貶すやつは居ない。もし居たとしても実力を示して黙らせてやれ。そしてトレア。生きているうちにもよく言っていたが君が好きだ。君には長生きして欲しい。最初君を見た時のことを思った。もしかしたら僕が死んだあとすぐにこれを見ないかもしれない。だから最後の3年で完成させた。1回ならマナ吸いはできる道具を。再度言うが君には長生きして欲しい。すぐにこっちに来たら君の頭を雑学でパンクさせてやるからな!!」と
そして不思議な物体の紙には【マナ吸いの魔具】と書かれたものがあったトレアは少し躊躇したがそれからマナを吸おうとした。するとなんということだマナが吸えた。だが魔具は粉々になってしまった。それから街を目指してトレアは進んで行った。
彼女がここから一体どうなるのか?それは誰にも分からないただ、彼女ならばやっていけるはずだ。彼女はいつだっておばあちゃんとヒラギが見守っててくれている。