陶 澄乃
プレイヤー:「」
「分かるんじゃない。分かっちゃうの。分かろうと努める必要さえないってこと」
- 年齢
- 17
- 性別
- 女
- 星座
- 蟹座
- 身長
- 160cm
- 体重
- 49kg
- 血液型
- B型
- ワークス
- 高校生
- カヴァー
- ブリード
- ピュアブリード
- シンドローム
- ノイマン
- HP最大値
- 28
- 常備化ポイント
- 4
- 財産ポイント
- 4
- 行動値
- 8
- 戦闘移動
- 13
- 全力移動
- 26
経験点
- 消費
- +34
- 未使用
- 0
ライフパス
| 出自 | 生まれた時から父はおらず、母は私を身ひとつで産んだ。これまで母は私の父親のことを一度も口にしたことがない。私の脳髄はそれでも断片情報を拾い集めて勝手に父がどういう人間だったのか思い至ってしまうけれど、それをここで殊更詳しく語る気はあまり無い。母は控えめだが責任感が強くて優しく、そして愚かだった。その弱さにつけこんで彼女と関係を結び、妊娠が発覚する前に去っていった男に興味はないし、今後も接点が結ばれることはないだろう。少なくとも母がこれ以上その男に苦しめられることはないはずだ。それでいいじゃない。 | |
|---|---|---|
| 父親不在 | ||
| 経験 | 私の人生は平々凡々としたものだ。より正確に言えば平凡に見えるよう常に神経を使った。人前で公開する自分の能力に限度を設け、そこから逸脱しないよう、かといって限度を維持し過ぎて首を傾げられないよう、注意深く気を使った。目や耳にしたものの答えや真実が一瞬で導き出せてしまう能力は秘密や偽りで塗り固められた現代社会ではあまりに強力すぎる。何故人間擬きが社会と足並みを合わせようとするのか自己分析すれば、やはり脆くなっていた母の精神にまだ幼かった私自身がとどめを刺してしまったことをずっと気にしているのだろう。 | |
| 平凡 | ||
| 邂逅 | 祖父母と出会ってなければ今頃私はどうなっていただろう。母の精神が壊れてから私が預けられた先にいた彼らはあまりにも当たり前の善性を持った人々だった。劇的ではない人生を淡々と積み重ね、人間は本来善くあるものだということを信じ、微笑みを絶やさない。決して裕福ではなかった。そのせいで酸いも苦みも散々味わってきたはずだ。それでも善くあることはそれだけで幸福なのだと彼らは確信していた。小学生も低学年の頃から既に大人を遥かに凌駕した知性を有していた私は彼らを見つめ続け、ついには認めざるを得なかった。善くあることは正しいことなのだと。彼らに与えられた外付けの倫理観が、一般的な人々の視点を欠き自分が彼らと同じ生物と思えず激しい異物感に苛まれ続ける私の微かなしるべとなってくれている。 | |
| 恩人 | ||
| 覚醒 | 侵蝕値 | 例えば工業製品ひとつを目にしただけで、それがどのような使い方をするもので、どのような材質で出来ていて、どのような構造になっていて、どのような設計意図があって、どのような需要があって、どのようなコストがかけられていて、どのような生産ラインで生み出されていて、どのようなルートでここに置かれて、どのような者が使用していて、どのように壊れていくのか。そういうことを一瞬で理解し連想する頭脳。それが私が生まれた時から備わっていたもの。私はそれが他人に備わっていないことを3歳の時に知り、5歳の時に隠すことを決めた。 |
| 生誕 | 17 | |
| 衝動 | 侵蝕値 | きっと自分が人間擬きだということを受け入れてしまうのは気持ちが良く清々しいことなのだろう。だって仕方ないじゃないか。お前たちと同じ速度で生きることはそもそも不可能だ。お前たちが半世紀をかけて進展させた情報化社会へより高純度に適応したいわば新人類。それが私だ。この能力をフルに使えば私は現代社会で起こし得るあらゆる善行とあらゆる悪行を為せるだろう。お前たちは今日までご丁寧にいくつもそのための手段を用意してくれたんだから。畑を耕し、肥料をやり、芽を守り、水を遣り、雑草や害虫を駆除し、丹念に時間をかけて育んだ黄金のひと粒を口にするのがこの頭脳を与えられた私の責務というものだ。腐らせてしまったらもったいないじゃないか。 |
| 解放 | 18 | |
| 侵蝕率基本値 | 35 | |
能力値
| 肉体 | 1 | 感覚 | 1 | 精神 | 6 | 社会 | 2 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| シンドローム | 0×2 | シンドローム | 0×2 | シンドローム | 3×2 | シンドローム | 1×2 |
| ワークス | 1 | ワークス | ワークス | ワークス | |||
| 成長 | 成長 | 1 | 成長 | 成長 | |||
| その他修正 | その他修正 | その他修正 | その他修正 | ||||
| 白兵 | 射撃 | RC | 2 | 交渉 | |||
| 回避 | 1 | 知覚 | 1 | 意志 | 調達 | ||
| 情報:噂話 | 1 |
ロイス
| 関係 | 名前 | 感情(Posi/Nega) | 属性 | 状態 | |||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Dロイス | 超血統 | ― | 対象:《常勝の天才》 | ||||
| 陶 一二三&陶 あかり | 尊敬 | / | 劣等感 | 実質的な私の育ての親と言える人々。それが彼らだ。どういう人物たちなのかと問われれば、善人としか言いようがない。誠実であることを重んじ、騙されるよりも騙さないことを尊び、隣り合う人をただそれだけで無条件に愛し、決して他者を憎まず疎まない。私の目からは極めて非効率的に見えるその生き方で私の目から見れば比較的効率的な生き方を容易く覆し有利な状況へと身を運ぶのを何度も見てきた。私は幾度となく検討を重ね、そして結論を出さざるを得なかった。この頭脳を持ちながら浅薄であるのは私の方なのだ。彼らの人を信じる真心こそ真の正しさなのだ。私は彼らの生き方をそのままなぞることはできない。そうするにはこの世界はあまりに虚飾が多すぎ、私はそれを見抜いてしまう。けれどそれはそれ、これはこれ。私は彼らを観察し、悟った。本当の聡さとはIQの数値ではない。ひとつことを信じ抜ける愚直さなのだと。だから八重樫を気に入ってしまったのかな。我ながら馬鹿っぽい話だ。 | |||
| 八重樫 若菜 | 好意 | / | 厭気 | 気の迷いで加減を間違えて模試で全国21位の成績を取ってしまった。その時に噂を聞きつけて八重樫はやってきた。机に突っ伏して耳をイヤホンで塞ぎ、ロックのリズムで周囲の世界を遮断していた私を強引に現実へと連れ戻した。なし崩し的に連れて行かれた先で生徒会の仕事を押し付けられる内、気がつけば書記に任命されていた。きっかけはそんな私からすれば傍迷惑なものだったが、辟易しているとは言うまい。私もあの女の「より楽しい学校生活を」という謳い文句の恩恵を受けているひとりだからだ。生徒会は八重樫の目にかなった者たちで構成され心地の良い連帯感と熱意があった。私にとっての学校生活というものが100点満点中の0点なのだとすれば、それを5点にまで押し上げている生徒会で過ごす時間は確かに八重樫のモットー通り改善されていると言って嘘はないだろう。 | |||
| 弦巻 結雨 | 有為 | / | 厭気 | 私だって予想外のことが起きれば驚きもする。例えば潜入した先の怪しげな思惑渦巻く学園の共用浴場に平気な顔してこんなのがいたりする場合だ。私の頭脳は目にしたものを勝手に解析・分析してしまうから、世の中に常識じゃ説明がつけられない“人間じゃないなにか”がいるのはずっと知ってた。探し出してコミュニケーションを取ろうと思ったことはなかっただけだ。都合だけを述べるならとても便利なやつ。こいつはどうやら人間では捉えられない範囲にまで及ぶ知覚を有しているようだ。私は入力された情報は素早く正確に分析し推論を立てることができるけれど知らないことにまでは把握できない。だからお互いの能力の相性はとてもいい。個人的な印象はというとべたべたと距離感が近くて鬱陶しい一方で接していて気持ちがラクだ。生まれてからずっと周囲の人間が自分と違う生き物にしか感じられない私にとって、人間かどうかは大した問題じゃない。それよりもこいつは私の見ている世界のいくらかを共有した上で話しかけてくる。無駄が少なくて、それが心地良い。 | |||
| 辻原 悠希 | 有為 | / | 隔意 | 手にした種子をあっという間に成長させる。私の脳味噌を用いても全く原理が分からないから、これを理解するには認識のアップデートが必要になるだろう。視線の配り方、話をした時の反応から、何らかの情報素子を操作しているんじゃないかと推測できる。すごいねオーヴァードって。そんなこともできちゃうんだ。まるで伝奇小説みたい。で、辻原という人格に対しての所は……うーん、普通かな。特筆するようなことはない。当たり前の感性を持った当たり前の人間というふうに推定できる。彼はきっとレネゲイドなんて力に目覚めなくても現在のような人間だったはずだ。誤解されるかもしれないがこれは否定的に言っているわけじゃない。こんな力を得たのにそう振舞えるというのは、決して生半なことではないと私は思う。可用範囲が広がるというのは性能の向上に他ならないけれど、それは必ずしも当人のプラスに結び付くと決まったわけではないからね。 | |||
| 紅咲 紡 | 有為 | / | 猜疑心 | それは例えるなら、計算結果にある程度の誤差が出るのが当然のデータ群を計算した時にひとつきりの答えしか出力できない、という違和感。それが紅咲という人物に対する私の理解。なるほど、これが本物の役者というやつか。健康状態、視線の振り方、服装の様子、身振り手振り、etc。相手をただ目の前にするだけで相手がどういう人物かある程度のあたりをつけられてしまう私をして、用意された偽物の答えに誘導させられていることに驚きを禁じ得ない。そんな有様なので少なくとも私ひとりでは彼女が隠しているものへ迫ることはできなさそうだ。何か別の切り口や情報がないと。とは言ったものの、実のところそこまで暴くことに興味があるわけではない。周囲に自分を偽りながら暮らしているのは私も同じだ。それに紅咲は必要な時に心からのお礼の言える女だ。それは人として、善いことだ。善いことができるからにはきっと善い人間なのだろう。 | |||
| 桐原 光莉 | 有為 | / | 食傷 | 優れた人物だと思う。話しぶり、自信、判断、そこから透けて見える決意と覚悟。年齢は私とそう変わらないはずだが、最初から備えていたり成長で獲得したものに加えて既に場数を踏んできたことが推測できる。UGNというのが慢性的な人不足であろうことはオーヴァードという存在の発生率を鑑みれば火を見るよりも明らかだ。きっと桐原のように年若くもチームのトップとして責任を負う、という者は少なくないのだろう。それを加味しても優秀な人材のひとりとして認識されていることは想像に難くないし、彼女がブレインなら少人数でも問題なく解決できると踏んだからUGNは送り込んできたんだろう。だからこそ彼女の私への対応は間違っていないし、私もそれについて理解できるし肯定する。ただあくまで個人的な感覚として予想以上に予想通りで少し退屈だっただけだ。私の予想通りじゃない出来事なんて滅多にあることじゃないからいいんだけどさ。 | |||
エフェクト
| 種別 | 名称 | LV | タイミング | 技能 | 難易度 | 対象 | 射程 | 侵蝕値 | 制限 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| リザレクト | 1 | オートアクション | ― | 自動成功 | 自身 | 至近 | 効果参照 | ― | |
| (LV)D点HP回復、侵蝕値上昇 | |||||||||
| ワーディング | 1 | オートアクション | ― | 自動成功 | シーン | 視界 | 0 | ― | |
| 非オーヴァードをエキストラ化 | |||||||||
| 天性のひらめき | 3 | メジャーアクション | ― | ― | ― | ― | 4 | ― | |
| あらゆる能力値判定および技能判定に組み合わせることができる。その判定のクリティカル値を-[LV(下限値7)]する。ただし、このエフェクトは戦闘中は使用できない。 | |||||||||
| 常勝の天才 | 10 | セットアッププロセス | ― | 自動成功 | シーン(選択) | 視界 | 7 | ピュア | |
| 対象がこのラウンドに行うあらゆる攻撃の攻撃力を+[LV×4]する。このエフェクトはあなたを対象にできず、1シーンに1回まで使用できる。[経験点修正:-5点] | |||||||||
| チェックメイト | 5 | オートアクション | ― | 自動成功 | 単体 | 視界 | 5 | 100% | |
| あなた以外の対象がダメージロールを行なう直前に使用する。そのダメージに+[LV×2]Dする。このエフェクトは1シナリオに1回まで使用できる。 | |||||||||
| 暗号解読 | 1 | メジャーアクション | ― | 自動成功 | 自身 | 至近 | ― | ― | |
| あなたに超絶的な言語センスがあり、どのような暗号や未知の言語であろうとも解読できることを表わすエフェクト。また、巧妙に隠された情報や暗号を見逃すことがない。GMは必要と感じたなら、適切な〈知識:〉による判定を行なわせてもよい。 | |||||||||
| 究極鑑定 | 1 | メジャーアクション | ― | 自動成功 | 効果参照 | 至近 | ― | ― | |
| 未知のアイテムひとつを分析し、その来歴や作成方法、使い道を導き出すエフェクト。この効果はあくまでアイテムについて知るだけであり、実際に作成したり、操作できるようになるわけではない。GMは必要と感じたなら、適切な〈知識:〉による判定を行なわせてもよい。 | |||||||||
| 構造看破 | 1 | メジャーアクション | ― | 自動成功 | 効果参照 | 至近 | ― | ― | |
| 人工的な機械や建造物などの構造を、見た瞬間に解析できるエフェクト。これによって精密機器を分解復元したり、未知の構造物内のだいたいの図面を書き起こしたりすることができる。GMは必要と感じたなら、適切な〈知識:〉による判定を行なわせてもよい。 | |||||||||
| 写真記憶 | 1 | メジャーアクション | ― | 自動成功 | 自身 | 至近 | ― | ― | |
| あなたが目にしたものを、その細部に至るまで詳細に漏らすことなく記憶していることを表わすエフェクト。たとえ何年も前にちらりと見た程度の本であっても、その片隅に書かれた落書きさえあなたは覚えているのだ。GMは必要と判断したなら、〈知覚〉による判定を行なわせてもよい。 | |||||||||
| プロファイリング | 1 | メジャーアクション | ― | 自動成功 | 自身 | 至近 | ― | ― | |
| 物品や品物を観察し、通常は気づかないようなちょっとした情報から対象の人物像を描き出すエフェクト。かのシャーロック・ホームズのように、あなたは少しの情報から真実を導き出す。GMは必要と感じたなら、適切な〈知識:〉による判定を行なわせてもよい。 | |||||||||
| 真相告白 | 1 | メジャーアクション | ― | 自動成功 | 単体 | 至近 | 1 | ― | |
| 相手に共感を示したり、逆に怒らせたりして質問に答えさせるエフェクト。あなたが聞きたい質問ひとつに対して、相手は嘘偽りなく、正直に答えを口にしてしまう。このエフェクトは1シナリオに1回まで使用できる。GMは〈交渉〉の判定を要求してもよい。また、回答を拒否してもよい。その場合、使用回数は消費しない。 | |||||||||
| 知識の殿堂 | 1 | メジャーアクション | ― | 自動成功 | 自身 | 至近 | ― | ― | |
| あなたがさまざまな知識、特に日常生活では役に立たないような雑学的知識の生き字引であることを表わすエフェクト。俗にクイズ王と呼ばれるような幅広い知識をあなたは有している。この効果で情報収集判定を行なうことはできない。GMは必要と感じたなら〈知識:〉判定を行なわせてもよい。 | |||||||||
| 遊戯の神 | 1 | メジャーアクション | ― | 自動成功 | 自身 | 至近 | ― | ― | |
| あなたがチェスや将棋、あるいはビデオゲームなどあらゆるゲームの達人であることを表わすエフェクト。あなたはどんなゲームでもすぐにその勘所をつかみ一流のプレイヤー以上の腕前を発揮することができる。GMは必要と感じたなら【精神】の判定を行なわせてもよい。 | |||||||||
コンボ
| 一般アイテム | 常備化 | 経験点 | 種別 | 技能 | 解説 |
|---|---|---|---|---|---|
| デモンズシード | 3 | 一般 | 対象:《常勝の天才》 | ||
| アドバンスドゴーゴル | 20 | 一般 | 戦闘以外であなたが行うメジャーアクションの判定のダイスに+2個する。 |
経験点計算
| 能力値 | 技能 | エフェクト | アイテム | メモリー | 使用総計 | 未使用| 10
| 0
| 131
| 23
| 0
| 164
| 0/164
| |
|---|
侵蝕率効果表
現在侵蝕率:
容姿・経歴・その他メモ
陶 澄乃が“自分は周囲とどうやら違うようだ”と気付いたのは齢にして僅か3歳の頃だった。
澄乃は生まれながらにしてオーヴァードだった。それも超血統と呼ばれる極めて純化されたピュアブリードのノイマンだ。
両親がオーヴァードであったとか、レネゲイドウィルスに関係するとか、そういったことは一切ない。
母子家庭という環境はごく普通であるとはいささか言い難いが、この世界の裏側の常識とは少なくとも何の関わりもなかった。
偶然、たまたま、何の理由もなく、澄乃はオーヴァードとして生まれ落ちたのだ。
幼少の頃から超血統のノイマンとして明晰な頭脳を有した澄乃は、預けられた保育園で自分と周囲との差を悟った。
初めて出会う同年代の子供たちは年相応に幼く、聡明な彼女はすぐにその違いについて結論を見いだせた。
違うのだ。私と彼らは。姿形だけは似ているものの、私と彼らは生き物として異なる存在なのだ、と。
陶 澄乃が“自分の能力はこの社会においては隠さないと不幸を招くらしい”と気付いたのは齢にして僅か5歳の頃だった。
父は生まれた時からいなかった。母は心優しくはあったが、決して心の強い人ではなかった。
澄乃を育てるために仕事と育児の二足のわらじを懸命にこなしたが、その限界が訪れたのが澄乃が5歳になった時だった。
正直なところ、自分が預けられた保育園で園児たちとのトラブルを起こさずとも遅かれ早かれパンクしていたと澄乃は思う。
そういう人だったのだ。悪い人じゃない。情けない人じゃない。ただ私を抱えたまま社会に適応するには弱かっただけだ。
詳細
きっと母は今でも心に病んでいるのだろう。
自分の弱さ故に5歳だった私と離れ離れにならざるを得なかったことを。
優しくて、何でもひとりで抱え込みがちで、真面目さだけが取り柄みたいな人だった。
間が悪かったのだろう。きっとそうだ。違う環境ならこの上ない美徳だったろう精神性は裏目に出た。
悪い男に引っかかって子供を作ってしまい、行方知れずになった男の代わりにひとりで私を産んで育て始めた。
責任感の強さも悪く働いた。何にも頼らず、両親にも黙ったまま。朝も夜もなく仕事に育児にと懸命に働いた。
愚かな人だ。愚かだが、愛すべき母だった。5歳の私は常々彼女の助けになりたいと感じていた。
ある日、私は保育園で些細なトラブルを起こした。たまたま機嫌が悪くて知能の低い彼らと諍いを起こしたのだ。
迷惑をかけた子の親へ平身低頭で謝った帰り、黙ったまま項垂れている彼女を元気づけたくて差し出したのだ。
銀行をハッキングして名義人が不明になった口座からかき集めた巨額の通帳を。
彼女が私の首を絞めた日のことだ。
それでも彼女が破裂するそのきっかけになってしまったことで、そのたった一度で澄乃は己の生き方を定めた。
───己を歪めてでも可能な限り隠す必要があるらしい。己の持つ力。常人と比べると優れすぎる灰色の脳細胞のことを。
心を病んだ母が倒れ、彼女の祖父母のもとへと預けられた時には澄乃は『年相応の子供』を演じるようになっていた。
特にレネゲイドと関係のない生まれつき。ノイマンという比較的社会において目立ちにくいシンドローム。賢すぎるが故の適応力。
それが各組織が澄乃という強力なオーヴァードを発見することをこの歳まで妨げることになった。
陶 澄乃が……時期は定かではないとしても、なるべくは善くあろうと務めるようになったのは小学生の頃だった。
この子にしてこの親あり。母の両親であり、澄乃の祖父母にあたるふたりはとことん善良な人物だった。
善くあることに見返りや意味など必要ない。それを体現する彼らはごく当たり前に善良で、ごく当たり前にお人好しだった。
劇的なことなど何一つとしてない。ごく普通の日常生活。ごく普通の近所付き合い。ごく普通の人生、ごく普通の老後。
利発な澄乃は非効率的な彼らの在り方を注意深く観察し、そして理解した。これは効率的な振る舞いなのだと。
侮るなかれ。善くあることはこの社会においてデメリットを遥かに超克するメリットを有している。
悪意による短期的で不安定な利益ではなく善意による長期的で安定した利益は自身の充足をある程度保証してくれる。
何よりもそこには納得があった。他者を踏み躙って得られる喜びは祖父母の穏やかな営みと比較すると空虚なものに感じられた。
この世に生まれてその差を感じ取ってからずっと身を焦がすもの。“私とお前たちは違う”という諦観。
自分を歪めて周囲と付き合うことに早くも疲れていた澄乃にとって、祖父母の緩やかな優しさはひとつの解答であるように映った。
以来、先天的に獲得した常人と比べれば理不尽なまでの能力を後天的に獲得した倫理観でどうにか制御しながら17歳になった。
どんな暗号や隠された符丁も即座に看破できます。
見ただけでその物品が何のためにありどのような使い方をするものか理解できます。
その構造物の仕組みや形を把握して図面に書き起こしさえできます。
一度見たものは例え何年も前にちょっと見ただけのものでも決して忘れません。
僅かな情報から真実へ辿り着くのなんてお茶の子さいさいです。
人と喋ってもその気になれば知りたい情報を吐くよう誘導できます。
雑学などのあらゆる知識全般に強いです。
ビデオゲームだろうがアナログゲームだろうがゲームもちょっと触っただけでプロゲーマー並みに熟達できます。
そんな人間にとって、一般的な社会の一般的な学生という生き方はあまりにも退屈で苦痛だ。
多くの物事は予測の範疇内。手段を選ばなければどんな事だって容易く達成できる。
フィジカルではなくロジックを重んじる現代社会の構造は澄乃にとってあまりに生き易すぎた。
ずっと感じていた。私は人間擬きだ。他者と視点を共有できず、自分が人間と同じ生物なのだと安心することができない。
いつからか日常にヘッドホンが欠かせなくなった。音を遮断して自分と外界を隔ててくれる象徴のような存在だった。
音楽のような数字と言葉だけで表せない創作の世界は、澄乃の自分自身で掻きむしって傷だらけの心を少しだけ癒やしてくれる。
そうして、耳を音楽の流れるヘッドホンで覆って机に突っ伏し瞳を閉じていた澄乃の前に現れたのだ、その女は。
八重樫若菜というその女がN高の生徒会長だということさえ澄乃は興味がなかった。情報としてしか知らなかった。
なるべく自分の能力を偽ろうとして、けれど分かっている答えに反する回答を記述するのは苦痛で。
それでうっかり気の迷いで取ってしまった全国模試何十位かの成績に若菜は興味を持ったらしかった。
勝手に身辺調査をしたらしい若菜は訪れるなり「生徒会に入りなさい!」と告げた。断った。ダメだった。連れて行かれた。
気がついたら生徒会の書記として働かされていた。生徒会の人々は皆温かみを持った人々だった。
特に若菜は興味深かった。澄乃が心を寄せる、数字や言葉だけで測れないものと同じ気配があった。予測不可能な女だった。
なんだかんだと数ヶ月を生徒会で過ごして、ふとした瞬間に澄乃は気付いた。“ああ。私はここを居心地いいと感じているんだ”。
同じ視点を持てなくても、先の展開が読めていても、生徒会で業務を淡々とこなして生徒会長を支える日々は嫌ではなかった。
それはN高の生徒会や生徒会長である若菜が常に自身の予想を超えるような人物であったからじゃない。
家族以外の誰かを尊び自分の心の中に相手の席を作るということがこんなにも心華やぐものなのだということを、つい最近知った。
若菜は今、N高にいない。
学校交流会とかいうもののために先方へと発ったまま帰ってこない。そしてそれを何故か周囲がまるで気にしない。
そこに澄乃は気配を感じ取った。知っている。この社会には語られない世界があるのだと。
時折街に残されている、澄乃の頭脳でなければ感じ取れない痕跡から、世界には裏側があるのだと分かっていた。
その裏側では何者かが暗躍し、この社会の安定を保ったり、逆に不安定へと導こうとしているのだということを。
そういったものと関わること。これまでの自分が維持しようと努めてきた安定を保つこと。
双方を天秤にかけた。迷うことはなかった。一瞬で決まった。澄乃は己の凄まじい学力を理由に学校交流会のメンバーへ選ばせた。
そうとも。今は下宿に泊まっていてしばらく会ってはいないが、あの尊敬すべき祖父母たちと一緒だ。
劇的な理由などいらない。見返りなどいらない。意味などいらない。善いことにカタチは必要ない。
善くあろうとするのは人間の根本原理だ。あとはただ納得があればいい。
それは己の才知に満ちすぎた思考が導いた答えすら遠く及ぶことのない、自分にとって純然たる絶対なのだと。
セッション履歴
| No. | 日付 | タイトル | 経験点 | GM | 参加者 |
|---|---|---|---|---|---|
| フルスクラッチ作成 | 34 |